ソビエト・インフォメーション

 旅行社から送られてきたパンフやその他の資料には、なかなか頼もしいことが書いてあった。
 曰く「ソ連の特殊事情により、スケジュールが一部または全部変更が生じる場合があります」曰く「ソ連の観光受け入れ事情により、ホテルは現地に到着してから決まります(これは種村サンの本でもそうだった)」
 僕たちのツアーに限らず、空港やホテルで添乗員が伝達する注意事項も、半ば脅し、半ば引導を渡すという感じで「ホテルの設備は悪い」「食事はさんざん待たされる」「列車の食堂車には期待するな。食べ物はあらかじめ自分で確保しておけ」等々。

 実際、いくつかは本当で、大半は良い方に外れたのだが、これはソ連に限ったことではなく、あらかじめオイシイ話をしていた場合、それが実現されなかったときに食ってかかるツアー客がいるためで、旅行社の防衛上の理由によるものも多いのだ。だから何でもかんでも「当局の事情」にされたのではソ連にしても迷惑な話だが、「ソ連ですから」と言われれば納得してしまう下地は我々の心の中に確かに、ある。
 会社で「ソ連に行って来る」と言うと、皆「気をつけて」と言うばかりで誰も土産をねだらなかった。ソ連はあぶない国、おっかない国のイメージが強く、金や琥珀の産地ということはあまり知られていないのである。
 写真撮影にしても、空港や軍事施設、鉄橋はもちろんのこと(西側諸国でも禁止している国はある)「日本人が写したがるところは大抵ダメ」と言われたものの、市内ではほとんどフリーであった。もっとも、外国人に開放された街を、旅行者として訪ねただけだから、ソビエト社会全体についてどうこういう資格は僕にはない。この本は、良くも悪くも「僕が見てきた範囲でのソ連の話」なのである。

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