旅が決まるまで

 今回僕が申し込んだのは、国際ロータリー旅行(株)という会社が主催した「シベリア鉄道と美しきバイカル湖8日間」というパックツアーである。全行程食事添乗員付きという、日頃「自由気ままな旅をしなくちゃ」と言っているワタクシとしては、あまり大きな声で言えない安直さであったが、自分でソ連旅行の手配をするのは田舎に住んでいると厄介だ。まぁ、汽車旅がメインの旅ならそれほど団体行動に縛られることもあるまいと思ったのだ。

 資料請求をしたのは1月の終わり頃だったが、送られてきたパンフ、正確に言うとパンフの入った封筒を見てびっくりした。僕の住所が「埼玉県深谷市大字・・・」と書かれていたのだ。もちろん間違ってはいない。むしろ正確すぎるのだ。免許証とかパスポートのような公的文書以外では僕は決して自分の住所に「大字」をつけたりはしないのである(田舎っぽく見えるのを嫌っているわけですね)。だから資料請求のハガキも当然「大字」抜きで書いたはずなのに・・・行き先がスパイの暗躍するソ連だけに、なんだか不気味であった。
 実際に申し込むまでには少しもたもたして、電話をしたのが2月の最後の日であった。こんな変わったツアーに申し込む人は少ないだろうという安心感もあったのだが甘かった。僕が希望する4月28日発のコースはすでに満席だという。
 しまった出遅れたか、せっかく思い立ったのになぁとガッカリしたが、駄目で元々と翌日もう一度電話してキャンセル待ちに名前だけ入れてもらえるよう頼んでみた。
「それはいいですけど、結構人気があるのでキャンセルは出そうもないですよ」と答えるそばで他の誰かが何か言っている気配があった。
「あのぉ、4月29日発では都合が悪いですか?」
「えっ、29日にアエロが飛ぶの!?」
「ええ、臨時便が出るんですよ。それでもう1コース増やしたんですが、こちらならまだ空いているんですけど」
「29日発のツアーがあるんなら、かえってそっちの方が都合いいよ。それに決めた」

 そういえば、どこかの会社のツアーで29日新潟発というのを見たような気がした。毎週金曜日に飛ぶアエロが土曜日に飛ぶなんてヘンだなと思っていたのだが、初めから臨時便を飛ばすつもりだったか。ともあれ、これなら休暇を取るのは5月1日と2日だけでよくなる。

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