「地球の歩き方」のこと

 旅行ガイドなんてものは帰ってきてから読んでみて「何だこれ、ウソばっかし」と間違いを見つけて愉しむ本である、なんてことは百も承知だ。行く前に念入りに読んでしまうとヘタな先入観を持ったり、旅自体が自分の予備知識を確認するだけのつまらないものになってしまう。
 とはいうものの、やっぱり事前に何か少しは読んでおきたい。初めての外国じゃなおさらだ。というので本屋に行ってみたのだが、なるほど海外旅行はとっくに一般的になっていて各社から新書版のガイドブックやグラフ誌サイズのムックやらが、それこそおびただしく出されている。だがだがしかし、ソ連を扱ったものは交通公社のが一冊あるだけなのだ。あちこち本屋を見て回ったのだが、とにかく近郷近在の本屋に置いてあるのはこれだけ、なのであった。
「やっぱりINAKAはいかんなぁ」
 そこで都内の大書店に行ってみたら、さすがにTOKAIは違う、なんと「地球の歩き方」シリーズのソ連編が出ていた。
 チープな自力の旅を提案するこのシリーズは、いまだにYHより高い宿にはビビってしまう僕にとって実に親近感の湧いてくる本で、読んでいると夢がふくらんでくるし、信頼のおける本なのだ。しかしまさか、これのソ連編が出ていようとは・・・。
 急にソ連が身近に感じられた。恐るるに足らず、といったところか。システムの違いでいくぶんぎごちない国だが、ソ連だって友好的に旅人を受け入れようと思っている国なのだと、この本があるということだけで、そう思えてきて安心した。
 システムの違いということに関連するのだが、日頃声を大にして「パック旅行は旅ではない」と言っているこのシリーズも「ソ連だけはパック旅行を否定しない」と言ってくれたので、僕自身パック旅行で出かけてしまうということで感じていた後ろめたさから解放された。さらにこの本でいくつかのモデルコースを紹介していた中に、僕の行程とまったく同じコースがあったので嬉しくもなってきた(予算のない人にもおススめ、というのには少しカチンときたが)。
 というわけで、この本を見つけて非常にヨカッタと思っているのである。ソ連に対するこちらからの勝手な緊張が取れ、楽な気持ちで旅立てるだけでも値段分の価値は充分にあったと思うのだ。

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