ソビエト最大の国家機密


 ホテルを出てきた男性5人(柳瀬氏は部屋に戻った)は、ハバロフスクの繁華街であるマルクス通りに向かって坂道を上る。新潟を出てからまだ半日ではあるが、見る物聞く物すべてが物珍しかった印象や感想を話し始めた。
「ソ連は多民族国家だし、このあたりはアジア系が多いから、我々がこうやって歩いていても、珍しくはないでしょうな」
 誰かが科学的な感想を述べたので、なるほどなるほどと感心したら、向こうから歩いてきた男が「コンバンハ(もちろん日本語)」と言ってすれ違っていった。しっかり素性がバレている
「しかし、若い女が綺麗ですねえ」
 とりなすように誰かが言うと、これには全員がすぐに同意を示した。
「さっきのレストランで斜め隣にいたの。あれは美人だった」
「うんうん」
「あっ、ほらほら。今前から来るのもすごい」
「それから、アエロのスチュワーデスも、少し歳がいってたけど美人だった」
「国際線は美人を選んで乗せてるんじゃないですか」
「西側に行く飛行機や鉄道の乗員は、筋金入りの共産党員だという話は聞いたことがあるけど・・・(行った先で亡命されないように、らしい)」
「あっ、今すれ違ったのも良かった・・・」

 とにかく若い女が圧倒的に美人揃いであることに議論の余地がない。顔の彫りが深く、色白で、出るべきところは出て締まるところはキュッと締まっている。街中ダイアナ妃が歩いているようなものだ。ところが、そのダイアナ妃も中年を過ぎると京塚昌子に変身する。これまた見事としか言いようがなくとても同じ人種とは思えない。
 我々はこの後もずいぶんとソ連の謎めいた部分に出っくわすのであるが、第一印象的に気づいたこのことがソビエト最大の謎であると断言したい。